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阿部 誉大氏
株式会社TOBE.Holdings
代表取締役
(あべ たかひろ) / 高校時代に複数のアルバイトで学費を稼ぎ、日本福祉大学へ進学。在学中の海外福祉経験を経て、大学院進学後の23歳で独立。コロナ禍の苦境を越え、現在はDX支援で「時間を作る」事業と、サウナや飲食店等で「時間を生かす」事業を多角的に展開。「誇れる1日を作る」を理念に、自立して周りを支える「力強い善人」となる人材の輩出を目指し、自身の強烈な原体験を原動力に熱量高く走り続けている。
毎日同じように満員電車に揺られ、会社に行けば効率化や生産性の向上ばかりを求められる。そんな日々を繰り返す中で、ふと「自分が働く意味ってなんだっけ」「このままでいいのかな」と、夜中に漠然とした不安を抱えてしまうことはないでしょうか。
愛知県を中心に事業を展開する株式会社TOBE.Holdingsの代表取締役である阿部誉大さんは、そんな私たちの心の中にあるモヤモヤに対して、強烈なまでの当事者意識と泥臭い実体験から生まれた、ひとつの力強い答えを提示してくれます。
ITソリューションによるDX支援というデジタルな事業を手掛ける一方で、サウナやコワーキングスペース、健康志向の飲食店など、泥臭いオフラインの実店舗運営にもこだわる阿部さん。一見するとバラバラに見えるそれらの事業の根底には、阿部さん自身の壮絶な原体験と、「働く人の1日を丸ごと人間らしくしたい」という切実で温かい願いが込められていました。
効率化の先にある「人間らしい1日」を取り戻す
——事業内容について伺いたいのですが、ITやDX支援を行う一方で、サウナやコワーキングスペース、飲食店なども多角的に展開されています。ここにはどういった背景があるのでしょうか。
阿部社長(以下、阿部):僕らの会社って、何の会社かわからないとよく言われるんですが、実は「時間を作る事業」と「生まれた時間を活かす事業」の両輪でできているんです。DXやAI活用、SNS運用などのITソリューションで中小企業の業務時間を削減し、効率化するのが時間を作る事業であり、そこで生まれた時間をどんなふうに使うのかを提案するのが、サウナやコワーキングスペース、サラダボウル専門店などの場を提供する時間を活かす事業なんですね。
——DXの会社がなぜサウナや飲食店を、という違和感がありましたが、効率化で生んだ時間の使い道までをデザインされているということですね。
阿部:そうなんです。我々のような事業会社は社会の課題を解決していくためにあると思っていて、日本の社会背景を見たときに、この30年間ずっと効率化しろ、生産性を上げろと言われ続けてきたのに、働く人にそれが還元されていないという強烈な違和感がありました。日本人は長く働いているのに生産性が悪いと言われていて、おまけに幸福度ランキングは世界でも61位と非常に低い。ちゃんと食べて、ちゃんと休んで、誰かと語らう。そんな当たり前のことが後回しにされて、休むことに罪悪感さえ覚えるようになっていますよね。
——確かに、効率化は会社のコスト削減の話になりがちで、自分の1日が楽になった実感はあまりありません。
阿部:だからこそ、効率化して生まれた時間をどうやって幸せに変えるのかというところまで引き受けられる会社があってもいいんじゃないかと思ったんです。テクノロジーで仕事から人が削られるような作業を取り除いて、街にちゃんと食べる場所や整える場所、縁が生まれる場所を作る。働く人の1日を丸ごと人間らしくして、その「誇れる1日」の積み重ねが誇れる人生になり、この国の幸福度を上げていくと信じて、今の事業構造に行き着いたんです。
会社は母親の生まれ変わり。設立当日の朝にかかってきた電話
——日本の幸福度を上げたい、自殺者を減らしたいという言葉には、単なる事業コンセプトを超えた切実な思いを感じます。
阿部:実は、今の法人の元となる事業を独立させて会社を設立したのが去年の10月16日なんですが、その設立日の朝に、兄から電話がかかってきて母親が亡くなったという知らせを受けたんです。僕が小学校5年生の時からずっとうつ病を患っていて、自ら命を絶ってしまって。今日から新しい会社で頑張っていこうと思っていた矢先に、なんでだ、というやりきれない思いでした。
——設立の当日に、そんな壮絶な出来事があったのですね。
阿部:53歳という若さで急にいなくなってしまって、本当に急なことでした。でも、この法人は僕にとっては母親の生まれ変わりのような存在だと思っているので、大事に大事に育てていきたいんです。今の会社のロゴマークには母の日に贈るカーネーションのモチーフを入れているんですが、毎日50人以上が自ら命を絶っているこの国の現状を、僕らの事業を通して少しでも解決していきたいという強い思いがあります。
——お母様への思いが、会社の存在意義そのものになっているのですね。
阿部:母は介護の仕事をしていたのですが、人を支える仕事をしている人ほど、自分自身のことは支えられていないという現状があります。この国には様々な生活苦や孤立などの社会的要因で追い詰められている人がたくさんいて、その事実から目を背けずに、僕らの会社はそれを解決するために社会貢献していこうと心に決めているんです。
1コマの授業料を計算した大学時代と、自己犠牲からの脱却
——社会や誰かのためにという強い当事者意識は、昔から持っていらっしゃったのでしょうか。
阿部:高校生の時に親が離婚して、自分の学費は自分で稼がないといけなくなってからですね。奨学金を借りながらアルバイトを5つくらい掛け持ちして、24時間の中でいかに時給を発生させるかをずっと考えていました。大学に入ってからも自分の学費は自分で払っていたから、授業中に寝ている同級生を見て「この人達もったいないな」って本気で思って。この授業1コマいくらなんだろうって計算したらだいたい15,000円くらいで、僕は1時間1,000円で働いているのに、この人達は1時間半で15,000円捨ててるのかって。じゃあ自分の1時間あたりの価値をどうやって高めていけばいいんだろうって、大学生の頃からずっと考えていましたね。
——学生時代から自分の時間と価値にそこまでシビアに向き合っていたのですね。その後23歳という若さで飲食店をオープンされたとお聞きしました。
阿部:そうなんです。23歳で飲食店をオープンさせたんですが、すぐにコロナ禍が直撃して大挫折を味わいました。当時は生き残るために宅配業からプロパンガスの訪問販売、完全成果報酬型の飲食店コンサルティングまで、もう手当たり次第に泥臭くやりました。寝る間も惜しんで働いて、自分さえ苦しければ周りが助かるならそれでいいやという自己犠牲の考え方を持っちゃってたんです。
——そこからどうやって、現在の「楽しく稼ぎ、周りを支える」という考え方にシフトしていったのでしょうか。
阿部:無理をして長期間体調を崩したりした時に、ふと気づいたんですよね。自分が周りの人の幸せを願っているように、周りの人も僕の幸せを願ってくれているんだって。それなのに、周りの人が願ってくれている僕の幸せを無視して、僕が自分で苦しんでいるのはよくないなと。周りのためにやっているつもりだったけど、それは違うんだなって、じんわりと気づいていったんです。そこから自己犠牲をやめて、事業も少しずつ周りに任せられるようになっていきました。
週末の居酒屋で会社の愚痴を言っているなら、自分の選択を疑え
——最後に、今の環境にモヤモヤしながらも次の一歩を踏み出せずにいる同世代に向けて、何か言葉をかけるとしたらどんな言葉をかけますか。
阿部:自分の人生は自分で選んでいるんだから、週末の居酒屋で会社の同僚や同級生と飲みながら会社の愚痴を言っているんだったら、やめた方がいいよって本気で思います。今の会社を選んでいるのも、そこにとどまることを選んでいるのも自分ですよね。なんで自分で選んだ自分の人生を否定しているのって思っちゃうし、だったらもっと自分がワクワクする方へ進んでいった方がいいんじゃないって。あなたの人生はあなた次第ですよ、と伝えたいですね。
——安定よりも自分がワクワクする方、成長できる方を選び続けてきたからこその言葉ですね。
阿部:なんで自分が成長したいのかって考えたら、やっぱり周りの人に幸せになってほしいからなんですよね。誰かに支えられる側じゃなくて、周りが困った時にサッと助けられる、与えられる人になりたい。自分一人だけでよかったら別に成長なんてしなくていいんですよ。でも、誰かに依存して生きていて、もしその依存先がいなくなったらどうするのって話じゃないですか。だからこそみんなには自立してほしいんです。
——自分自身が自立して、周りに与えられる人になるということですね。
阿部:うちの会社では「力強い善人になる」という裏コンセプトを掲げています。自立して周りの道を拓ける人になってほしい。仕事を通して人間的に成長してもらって、そういう人が一人でも増えれば、この国はもっと良くなるって本気で信じているんです。僕が話しているのは綺麗事じゃなくて、自分の人生の経験の話だから何の嘘もありません。一人でも多くの人が、自分の1日を誇れるようになってほしいですね。

取材を終えた後も、「週末に居酒屋で愚痴を言うくらいならやめた方がいい」という阿部さんの言葉がずっと胸に刺さっていました。IT企業を多角的に展開する若手経営者という肩書きからは想像できないほど、阿部さんは泥臭く、誰よりも他者の幸せを本気で願う温かい体温を持った方でした。壮絶な原体験や自己犠牲の果てに行き着いた「周りが困ったときにサッと手を差し伸べられる人間でありたい」という嘘偽りのない生き様は、効率化ばかりが求められる日々に疲弊する私たちの背中を力強く押してくれます。「このままでいいのかな」と自身の働き方に迷いが生じた夜。誰かに依存するのではなく、自分の人生を自分で選び取るための道標として、この記事が愛知で働く誰かの心に届くことを願っています。
この記事を書いた人
小川藍
新卒2年目。大学での心理学の学びがきっかけで、「人の心を動かす」ことに興味を持ち、求人業界に飛び込む。「人と企業を結ぶ採用支援」に魅力を感じ日々営業活動中。「あなただから頼みたい」そう言っていただける営業を目指し、日々営業中。
営業
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