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末永 晃久 氏
東福株式会社
代表取締役社長
(すえなが・あきひさ)/名古屋の建築設備系専門学校を卒業後、別の設備会社で修業を積み、父親が創業した東福株式会社に1999年に入社。入社後は丁寧な対応で信頼を築き、売上を倍増させて二代目社長に就任。「小さな修理でも絶対にNOと言わない」地域密着の姿勢で、地域の水回りを支え続けている。現在は、血縁関係のない社員への事業承継を見据え、休日日数の増加など時代に合わせた働き方改革に奔走している。
愛知県東海市。この地で地域密着のインフラ整備を担い続けているのが、昭和63年(1988年)創業の東福株式会社です。地域の水道管を整備する大規模な公共工事から、一般家庭の「水が出ない」「水漏れしている」といった小さなトラブルまで、水と生活に関わるあらゆる困りごとに対応し、地域からの厚い信頼を集めてきました。平成11年(1999年)に二代目として父親の会社に入社し、売上を当時の倍近い規模へと成長させた末永社長。しかし、その背景にあるのは右肩上がりの成長を無邪気に信じるようなポジティブなものではなく、「仕事がなくなるのが怖い」という泥臭く等身大の不安でした。現在、血縁関係のない社員への事業承継を見据え、若い世代のために「年間休日120日」という働き方改革に本気で奔走している社長にお話を伺うと、そこには不器用ながらも確かな体温を持つ大人の姿がありました。
「仕事がなくなるのが不安だった」地道に築き上げた絶対的な信頼
ーー社長は平成11年にこちらにご入社されたと伺っていますが、当時と比較して会社の売上は倍近くに成長されているそうですね。業績を伸ばし続けてこられた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
末永社長(以下、末永):私が入社した頃は売上がだいたい8000万円くらいだったのですが、今は1億5000万円くらいになっています。ただ、何か特別な魔法を使ったわけではなくて、入社してから今まで、とにかく「仕事がなくなるのが常に不安」だったんですよ。土日でお休みになっている時でも、自分が休んでいる間に他の人がどこかで仕事をしていると思うと焦ってしまうような、本当に心配性な性格なんです。だからこそ、仕事をもらうために工務店さんや一般のお客様のところへ訪問して「どうですか」と地道に営業をかけたり、役所から修繕を頼まれたら絶対に手を抜かずにやり切るということをひたすら積み重ねてきました。
ーーホームページでも「小さな修繕依頼でも絶対にNOと言わない」という姿勢を強く打ち出されていますね。それは創業時から変わらないポリシーなのでしょうか。
末永:それは絶対に譲れないところですね。地元の一般のお客様から来る、数千円くらいの小さな部品の取り替えのようなご依頼でも、絶対に断らずに受けています。結局のところ、そういう日々の小さな対応の積み重ねが一番大切なんですよ。うちは公共工事もやりますが、特定の工事だけに特化しているわけではなく、良い意味で何でも屋として対応できるのが強みです。最近では、うちの担当地区ではないお客様が役所に水道の問い合わせをした時に、役所の方から「そっちの地区だったら東福さんがいいよ」と紹介してもらえるくらいには、この地域に浸透してきているのかなと感じています。
ーーインフラや水回りの仕事というのは、人々の生活に直結する非常に重要な役割ですよね。日々の業務の中で、どのような時にやりがいを感じられますか。
末永:個人のお客様のところへ行って水回りの修理をすると、ダイレクトに「ありがとう」って感謝されて、その上でお金をもらえるんです。これって、他の仕事ではなかなかないことなんじゃないかなと思います。特に水回りのトラブルというのは、生活できなくて本当に困っている方が多いですから、その困りごとを解決して直接感謝の言葉をいただけるというのは、この仕事を続ける上でのすごく大きなモチベーションになっていますね。
ーー一方で、道路を止めて行うような大規模な公共工事にも携わられていますね。
末永:東海市の水道管工事などで、道路を止めて何百メートルという規模の工事を行うこともあります。夏の暑い時期や天候が悪い時は本当に過酷ですし、交通規制も伴うので大変なプレッシャーもあります。ですが、見えないところで地域のライフラインを確実に支えているという大きな責任感がありますし、工事が無事に終わった時の達成感は何物にも代えがたいですね。そういう大きな仕事と、個人宅の小さな仕事の両方に携わることができるのは、うちの会社ならではの面白さだと思います。
学歴も経験も関係ない。ただ「嘘をつかない正直な人」を育てたい
ーー現在、現場の最前線で活躍されている社員の方々は、社長が就任されてから採用された未
経験スタートの方が多いそうですね。
末永:今、現場の要として活躍している40代の社員は、もともと水道とは全く違う建築関係の職人をやっていて、うちの現場に応援に来ていた時の縁で入社してくれたんです。当時はまだ20代で未経験でしたが、そこから15年くらい経って、今はもう現場を完全に任せられる一人前になりました。うちの仕事は、一通り覚えるのにだいたい3年から5年くらいはじっくり時間がかかりますね。
ーーこれから新しく採用される方も、未経験で問題ないのでしょうか。
末永:学歴や経験は全然関係ないですね。学校で学んだ知識ももちろん大切ですが、この仕事は現場に出て自分で手を動かし、失敗しながら覚えていって初めて分かることが多いんです。だからこそ一番求めているのは、やっぱり「嘘をつかない、正直で真面目な人」です。言われたことに対して素直に動けるとか、ごまかさずに真っ直ぐ仕事に向き合えるとか、そういう人間的な部分が何よりも大事だと思っています。現場で一緒に汗を流しながら、3年、5年と時間をかけてじっくり育てていくつもりです。
ーー経験者ではなく、あえて未経験の若い世代をじっくり育てていきたいという思いがあるのですね。
末永:もちろん即戦力となる経験者の方が来てくれたら非常にありがたいですし、大歓迎です。ですが、会社の今後の十数年先、さらにその先を考えた時に、真っ白な状態からうちの会社のやり方や地域のお客様への接し方を学んで、長く会社を支えてくれる若い人がどうしても必要なんです。これまでの経験にとらわれず、飾らない素直な気持ちで、現場で起きたことに対して正直に報告して一緒に解決していけるような、そんなガッツのある方に来ていただきたいですね。
実質95日の休みを120日に。次世代のために挑む「働き方改革」
ーー建設業界といえば「休みが少ない」「労働時間が長い」というイメージを持たれがちですが、社長は今、社員の休日日数を増やすために奔走されていると伺いました。
末永:これからの時代に合わせて会社を存続させていくためには、社員の働きやすい環境づくりが絶対に避けては通れない課題だと思っています。現状は実質95日程度の休日なのですが、これをなんとか120日以上に増やせないかと、社労士の先生とも打ち合わせを重ねながら本気で新制度を考えているところです。完全週休2日制で有給休暇も含めてしっかり休める体制を作らないと、若い人たちは定着してくれませんからね。
ーー会社としては非常に大きな決断であり、乗り越えるべき壁も多そうですね。
末永:正直なところ、人が増えれば簡単に休めるようになるかというと、現場の管理の問題もあってそんなに簡単な話ではありません。工務店さんのスケジュールもありますし、業界全体として「休みとして設定されていても現場に出なきゃいけない」という空気がまだ残っているのも事実です。でも、自分が若い頃は「休まず働くのが当たり前」だったとしても、今の時代にそれを押し付けるのは間違っています。会社としてしっかり人を増やして、若い人が当たり前のようにちゃんと休みを取りながら働ける会社作りをしなければいけません。
ーーどうしても稼ぎたいという方に対する柔軟な対応なども検討されているのでしょうか。
末永:もちろん、中には「休日出勤をしてでも給料を稼ぎたい」という方もいると思います。そういった希望がある場合には、決して強制ではなく本人の納得の上で相談に応じる形も用意したいと考えています。ただ、ベースとなる会社の制度としては「しっかりと休める120日の休日」を大前提として用意したいんです。そのために、まずは未経験でも若い人を2人採用して、業務を分担できる体制を一刻も早く構築したいと動いています。
息子には継がせない。血縁にこだわらず、現場で育った社員にバトンを渡す
ーー働き方改革を進めるその先には、会社の将来的な事業承継という大きなテーマも見据えていらっしゃるとお聞きしました。
末永:ええ。私が今55歳になりますので、あと5年、60歳くらいまでには誰かに代替わりしてスライドできるような体制をしっかりと構築したいというのが直近の大きな目標です。そのために今、現場を引っ張ってくれている40代の社員が次の社長として会社を回していけるように、基盤づくりやサポートをしているところなんです。
ーー創業者のご子息である社長ご自身のように、ご自身のお子様へ会社を継がせるという選択肢はなかったのでしょうか。
末永:私には息子がいますが、会社を継がせるつもりは全くありません。この仕事はどうしても泥臭くて大変な部分がありますから、息子には自分の好きな道、歩みたい道を行ってもらえればいいと思っています。私自身は小学生の頃から「自分の腕でやっていきたい、社長になりたい」という独立心が強かったからこの世界に入ってこれまでやってきました。でも、息子たちの世代の価値観はまた違いますからね。親の都合で無理に継がせるようなことはしたくないんです。
ーーだからこそ、血縁にとらわれず、現場で育った社員の方にバトンを渡そうとされているのですね。
末永:そうです。今いる40代の社員が私の次に会社を引っ張っていき、今回新しく入社してきてくれる若い人が、その下で3年、5年と着実に仕事を覚えて一人前になっていく。そしてさらに15年後、20年後に代替わりのタイミングが来た時には、今回入ってきてくれる人が「次の次の社長」を狙っていけるような、そんな夢のある環境を作りたいんです。
会社の規模をひたすら拡大して売上至上主義でやっていきたいという思いは、昔からあまりありません。それよりも、地域にしっかりと根を下ろし、地に足をつけた状態で堅実に、お客様に感謝されながら安定して会社を続けていくことの方がずっと大切です。仕事に対する誠実な姿勢を受け継ぎながら、休む時はしっかり休める。そういう当たり前のことを、新しい世代と一緒にちゃんとやっていける会社であり続けたいですね。

世の中には右肩上がりの成長や華々しいビジョンを掲げる企業も数多くありますが、末永社長のように「地域に求められることに誠実に応え続ける」「社員が当たり前に休める環境を作る」という地に足のついた思いこそが、働く人にとっての一番の拠り所になるのかもしれません。
血縁にとらわれず、現場で汗を流す社員に会社のバトンを繋ごうとする、不器用で真っ直ぐな温かさ。「今の働き方のままでいいのかな」と立ち止まりそうになった時、こんな体温を持った大人がいる場所でリスタートを切るという選択肢は、私たちの心を少し軽くしてくれるはずです。
この記事を書いた人
岡田大貴
2011年中途入社。求人広告業界歴18年以上。一貫して愛知県の中小企業様の採用をご支援。アルバイト・パート・派遣から正社員まで幅広い雇用形態に対応可能。常にお客様に寄り添う「伴走型」のパートナーとして、採用課題の解決に向けて一緒に取り組んでいる。
営業
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