インセンティブは一切なし。正直に正しいことをやり続けるしかない――通信と飲食で描く、誰も見捨てない会社のつくり方——株式会社Everyone’S

インセンティブは一切なし。正直に正しいことをやり続けるしかない――通信と飲食で描く、誰も見捨てない会社のつくり方——株式会社Everyone’S

水谷 僚氏

水谷 僚氏

株式会社Everyone’S

代表取締役社長

(みずたに りょう)/1983年生まれ(現在43歳)、愛知県名古屋市出身。学生時代は野球・ハンドボール・ラグビーに打ち込み、キャプテンや県代表を務める。スポーツトレーナーの専門学校へ進学後、19歳で恩師の学習塾で働き始め、約10年間塾講師を務める。その後、様々な事業を経験したのち、28歳で現在の株式会社Everyone'Sを創業。現在は通信事業(従業員約120名)を主軸に、自身の長年の夢であった飲食事業も展開。子ども食堂の運営にも力を入れている。

 

株式会社Everyone’S(エブリワンズ) は、愛知県名古屋市に本社を構え、通信事業を主軸に120名以上の従業員を抱える活気あふれる企業だ。しかし、この会社にはいわゆる「数字に追われるゴリゴリの営業会社」ならではの張り詰めた空気や匂いがまったく感じられない。それどころか、通信営業という業界においては極めて異例とされる「個人のインセンティブ(成果報酬)」を完全に廃止し、「完全固定給・年3回賞与」という独自の評価制度を長年にわたって貫き通している。代表取締役社長を務める水谷僚さんは、学生時代から様々なスポーツでキャプテンや県代表を務めるなど、常にトップを走り続けてきたいわゆる体育会系だ。これまでの人生で大きな挫折を知らなかったという彼が、なぜ業界の常識に逆張りしてまで、働く社員たちの生活の安定を守ることにこれほどまでにこだわるのだろうか。そして、もう一つの事業の柱であり、水谷社長自身の長年の夢でもあったという飲食事業や、子ども食堂を通じた社会貢献への熱い思いとは。名古屋市内にあるオフィスのリラックスした空気の中、これまでの道のりや会社に込めた願いについて、ざっくばらんに語ってもらった。

 

 

「人生で挫折をしてこなかった」エリートが流した、初めての悔し涙と原動力

 

――学生時代はスポーツ一筋で、野球やハンドボール、ラグビーなどでかなり華々しい経歴と実績をお持ちだと伺いました。

 

水谷社長(以下、水谷):そうですね、学生時代はずっとスポーツに打ち込んできて、小学校の野球ではキャプテンをやらせてもらって中学校の有力なクラブチームにスカウトされたりもしました。当時一緒にバッテリーを組んでいたピッチャーは後にドラフト1位でドラゴンズに入団したほどの選手だったのですが、僕はそこで野球をすっぱりと辞めて中学ではハンドボールを始めたんです。そこでも区大会で負けた相手が全国1位のチームだったくらいレベルが高くて、高校に入ってから始めたラグビーでもキャプテンをやらせてもらい、愛知県代表に選ばれたりもしました。自分で言うのもなんですが、人生においてあまり大きな挫折らしい挫折をしてこなかったんですよね。

 

――そこから専門学校を経て、新卒で企業に就職するのではなく、なぜか塾講師のアルバイトから、という異色のキャリアをスタートされています。

 

水谷:僕が個人的にすごく尊敬している塾の先生が立ち上げた会社があって、最初は4つ下の妹がそこに通っていたんですが、夜に車で迎えに行った時に「お前、今は何やってんの。来週からうちの塾の先生やらないか」って突然言われまして。そこから30歳くらいになるまでの約10年間、ずっとその先生のもとで塾講師をやっていました。でも、実はその頃から「いつか自分たちで飲食店をやりたい」っていう気持ちが心の中にすごくあったんですよ。気の置けない友達と楽しく飲める場所が、自分たちの手で作れたら素敵だなっていう、若い奴が持っているような本当にシンプルで純粋な夢ですね。

 

――その長年の夢だった飲食店を立ち上げるために、まずはご自身で会社を作られたということでしょうか。

 

水谷:そうです、その飲食店を作るための資金を用意するために、通信の営業会社を作ったというのが今の会社の一番最初のきっかけなんですよね。ここから少し飲食事業の話になるんですが、飲食で独立するぞということは最初から決まっていたにも関わらず僕自身には飲食の現場経験が全くなかったんです。なので、まずは経験を積まなきゃいけないと思って、28歳くらいの時に結婚式も行うモダンイタリアンレストランで初めて飲食のアルバイトをさせてもらいました。アルバイトでも3次面接まであるような格式の高いお店で、右も左も分からない状態でキッチンに入って2年間必死に働かせてもらい、なんとかお金を貯めました。そして、飲食事業部の一つとして鶴舞の高架下で『アジト』という創作イタリアンのレストランをスタートさせたんです。

 

――念願の夢が叶った素晴らしいスタートだったと思いますが、そこから順調には進まなかったとお聞きしました。

 

水谷:実は、その念願だったお店はわずか1年半で畳むことになっちゃったんですよ。立ち上げから頑張ってくれていたシェフのご家族に不幸があって、どうしてもその土地で仕事を続けることができなくなってしまったんです。売上的にはお店を継続できるくらいの水準だったんですが、とにかく人も離れていき、全てがうまくいきませんでした。何百人もの方にお祝いしていただいてスタートしたのに、早々にお店を閉める決断に至りました。今まで挫折を経験してこなかった自分にとっての初めての挫折でした。本当にもう悔しくて悔しくて、めちゃくちゃ涙を流したんですよね。でも、この夢だけはもう1回絶対に叶えなきゃいけないと強く誓いました。そこでもう一回資金を作るために耐えるぞってことで、通信の仕事に完全にコミットして会社を立ち上げ、成長させていったんです。

 

 

インセンティブは一切なし。嘘をつかず、誠実に正しいことをやり続けるしかない

 

――通信業界の会社として新たなスタートを切り、現在では従業員120名規模にまで大きく成長されていますが、創業の背景にはどんな思いがあったのでしょうか。

 

水谷:今から15年くらい前の通信業界って、過酷な労働環境を強いる本当にブラックな会社さんばっかりだったんですよ。僕が塾の先生をやっていた頃の教え子だったり、周りにいた若者たちが、みんないろんな悩みを抱えて疲弊していて。通信というものは生きていく上で絶対に欠かせないインフラになっているにもかかわらず、そこで関わっている若者たちが次々と心を折られて、この業界から消えていくっていう悲しい姿をたくさん見てきちゃったんですよね。それで、彼らが「水谷さんが社長をやってくれるんだったら、僕らは今の会社を辞めてきます」って言ってくれて。だから僕は、通信業界の事情を何も知らずに、彼らに神輿を担がれる形で社長になったっていうのが実情なんです。

 

――エブリワンズさんでは、「インセンティブなし・完全固定給」という、通信の営業会社としてはかなり珍しい制度を導入されていると聞きました。

 

水谷:働き方だったり雇用の仕方だったりっていう根本的な部分で、なんとかこの業界を変えられないのかなってずっと疑問に思っていたんですよね。だからうちの会社は、個人のインセンティブは一切なし、年に賞与を3回支給する、完全固定給、完全社員制という形に、3年目の時に思い切って振り切ったんです。完全に逆張りしないとこの業界では勝てないなって思ったのもありますし、結局インセンティブで一時的な成果を追わせ、利益をとるだけのやり方は、本当の意味での経営とは言えないのではないかと感じていて。人を大切にしない文化の中で仕事を続けていくのは、少し違うのかなという疑問があったんです。

 

――社員の方々の生活の安定と心の平穏を、何よりも第一に考えたということですね。

 

水谷:そうです、生活が安定しなくてこの業界にいられませんって若者たちから言われるのが一番悲しかったんで。もちろん、会社としてめちゃくちゃ固定給を高く設定できるわけではないですけど、とにかく自分自身の生活を守って家族を養えるくらいの給料は毎月ちゃんと渡せるし、みんなでやった分だけ会社の利益としてボーナスで還元していくという風にして、まだまだベンチャーの営業会社ですけど、ちゃんと夢を見させてあげたいなと。携帯ショップに入って営業する人間も多いんですが、キャリアさんから会社に入ってくるお金って基本的に単発なんですよ。周りの代理店のスタッフがインセンティブで稼いでいる環境の中で、あえて固定給を貫くというのは、当時はすごく珍しかったと思いますね。

 

――とはいえ、営業会社である以上、ノルマや数字に対するプレッシャーはどうやってマネジメントされているのでしょうか。

 

水谷:他の会社さんに比べたら、数字を上げろみたいなプレッシャーをかける話はほぼしていないと思います。うちの会社がとにかく大事にしている文化みたいなものは、「とにかく目の前のことを一生懸命やろうよ」っていうのが一つと、あとはもう「とにかく誠実に、正直になる」ということだけです。通信業界ってどうしてもちょっと嘘をついて強引に売るようなイメージがあるかもしれないし、実際に昔はそういうやり方が横行していたんですけど、うちは「とにかく正しいことをやろうよ」って。それで数字が少なかったら、もうそれはしゃーねえよって感じです。お客様が来ない厳しい状況の中でも、嘘をつかずに正しいことをやり続けるしかないよねって、みんなに浸透させています。

 

 

飲食で働く人を豊かにし、子どもたちの未来をハッピーにする場所を作る

 

――最初の飲食事業での悔しい挫折から時間を経て、現在では再び飲食事業を展開されていますね。2026年10月2日にも新店舗をオープンされると聞きましたが、どのような思いが込められているのでしょうか。

 

水谷:5年くらい前に会員制の食堂を出させてもらって、来月には新栄に『多異集食堂 ナナイロ』という新しいお店をオープンする予定です。僕がこれだけ一生懸命に飲食事業をやっている理由の一つは、何よりもまず飲食に関わる人の働き方を変えたいからなんですよね。たかだか4年くらいのアルバイト経験ですけど、飲食の現場ってめちゃくちゃハードワークで。土日だけで結婚式の料理を2000食くらい作って、座る暇もなくて立って昼ご飯を食べるし、タバコ休憩なんて当然回してくれないような過酷な世界でした。プロポーズをするのも、友達の深い悩みを聞くのも、ご飯を食べる場所ってとっても素敵なシチュエーションを提供できる場所なのに、そこで働いている人間が素敵な働き方をしていないというのが、とっても不思議に感じ始めてしまって。

 

――素敵な空間を作り出す人たち自身が、心身ともに疲弊してしまっている状況を変えたいと。

 

水谷:そうです、素敵なものを提供する場所で、それを提供する人たちが素敵な心や余裕を持っていなくてどうするんだと思ったんです。だから、飲食業界で働く人たちが時間も心もお金もあって、人間として豊かになれるような場所を作ってあげたいんです。会員制のお店の方は週休2日で夜しか営業しない、仕込みが間に合っていれば出勤時間は本人に任せるという風にしていて、次のお店も休みをしっかり取らせながら回していくつもりです。飲食業界で働く人がちゃんと誇りを持てるような、そんな労働環境を当たり前にしていきたいんですよね。

 

――子ども食堂の活動も積極的に行われていますが、そこにはどのようなきっかけがあったのでしょうか。

 

水谷:年に2回イベントをやっていて、2万人くらい集まる規模のものもあるんですが、これも僕ともう3人くらいの同世代の仲間たちと一緒に主催してやらせてもらっています。実は、今の時代でも40人クラスがあったら10人くらいはまともな食事が食べられない環境にいる子どもたちがいるんですよね。それを初めて知った時に本当に衝撃を受けて、えーっと思って。何か一つでも彼らを救うきっかけを作れないかと思って、次のお店も土日に関しては中学生以下のお子さんの食事は完全に無料にしようと思っています。何かお店のちょっとしたお手伝いをしてもらってもいいし、ただご飯を食べに来てくれるだけでもいい。そこはもう全部開放して、そういう活動をしていきたいんです。

 

――その活動自体が、お店で働くスタッフの皆さんの仕事への誇りにも直結していくのですね。

 

水谷:はい、飲食で働いているスタッフのみんなに、自分たちの仕事がそういう困っている人たちを直接救ってハッピーにしているんだよって肌で感じてほしいんです。そして、ご飯を食べに来た子どもたちが大人になった時に「昔、あの場所で救われたな」って覚えておいてくれたら、いつか飲食っていうもの自体に憧れを抱いてくれるんじゃないかなって。それが、僕がお店をやり続けるもう一つの大きな理由ですね。

 

 

株式会社エブリワンズが目指す、「100億」の景色と本質的な強さ

 

――最後に、今後の会社としての大きな展望や目指している目標について教えてください。

 

水谷:株式会社エブリワンズという会社としては、創業から20期目となるあと5年後に「売上100億企業になる」というのを一つの大きなミッションとして掲げています。今はだいたい30億くらいなんですが、僕らの戦っているマーケットって、東海エリアが1だとすると関東エリアは15くらいあると言われていて。東海エリアでは実質一番になれているという自負があるので、次は東の巨大なエリアを攻めていくぞと。今はなんとかそのための根っこを生やしている状態です。西は中国・四国地方までのマーケットには入っていけたので、今年中に九州、そして来年くらいから本格的に関東へ進出していこうと決めています。北海道から沖縄まで全国でやれる力強い会社にするというのが、この5年間の具体的な目標ですね。

 

――会社の規模がさらに大きくなっていく中で、根本にあるスタンスや社員への向き合い方は変わらないのでしょうか。

 

水谷:実は、創業2年目で人が離れてしまった時期から8年目ぐらいまでは、従業員50人規模で本当に誰も辞めない離職ゼロの会社だったんですよ。すごくあったかくて、みんなのコミュニケーションが密に取れていて。でも、ある時に役員たちと話して『このままで本当に正解なのかな』って疑問を持ったタイミングがあったんです。ただ周りから『いい会社だね』と思われるだけで、じゃあうちの会社が本当に強く成長していくのか、みんなの生活が本質的に豊かになっているのかって考えたら、それはちょっと違うんじゃないかと。だから、会社を成長させる以上、ある程度の退職が出るのは致し方ないという痛みを伴う方向に振り切って、とにかく採用して仲間を増やしていくことに決めたんです。結果的に退職も出るようにはなりましたが、それでも業界全体から見ればかなり少ない方だとは思います。

 

――単なる仲良しこよしで終わるのではなく、本当の意味での豊かさと組織の強さを追求していくフェーズに入ったのですね。

 

水谷:ええ、会社名がエブリワンズというくらいですから、『みんなで一緒にやろうぜ』っていうのがそもそもの根本にあります。正しいことを誠実にやり続けて、誰も見捨てずに、みんなで一緒に豊かになっていく。まだまだこれからのベンチャーの営業会社ですけど、インセンティブがなくてもちゃんと頑張りが報われて、みんなが誇りと夢を持てるような会社であり続けたいなと思っています。100億企業になり、日本一の通信に特化した来店型営業の営業会社となり、うちのメンバーたちに日本一の会社に勤めてるんだぞと、家族や友達たちに胸が張れるそんな企業にしていくと決めています。

取材を終えてオフィスを出た時、なんだか肩の力がスッと抜けている自分に気が付きました。通信の営業会社と聞いて、正直に言えば「数字に追われるピリピリした空気」を想像していましたが、株式会社エブリワンズにはそれがまったくありませんでした。

「インセンティブで一時的な成果を追わせるだけのやり方は、本当の意味での経営とは言えないのではないか」

水谷社長のこの言葉は、日々の業務の中で「自分は何のために働いているのか」「数字を追うだけの毎日に意味はあるのか」とモヤモヤを抱える私たちの心に、深く突き刺さります。

ビジネスである以上、当然利益は追求しなければなりません。しかし、嘘をついてまで数字を作るのではなく、「誠実に正しいことをやり続ける」という真っ直ぐな哲学が、120名もの社員の生活と心をしっかりと守っていました。長年の夢だったという飲食事業での働き方改革や子ども食堂の取り組みも、すべては「人を使い捨てにしない」「誰も見捨てない」という水谷社長の強い覚悟の延長線上にあります。

効率や成果ばかりが求められ、少し息苦しさを感じる今の時代。もしあなたが働く意味を見失いそうになった時は、愛知にはこんなふうに「体温のある働き方」を本気で作り、守ろうとしている大人がいることを思い出してみてください。

この記事を書いた人

宗宮彰良

宗宮彰良

ツムログ副編集長。2012年に新卒でアクセスに入社し中小企業の社長のお悩みを500社以上サポート。採用の枠を超えたお悩み解決をモットーに月間50件の商談をさせていただいています。想いが強ければ採用はうまくいく。一緒に想いをかなえましょう。

営業

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